睡眠が糖尿病を改善する 心臓病と脳卒中のリスクを低下させる



良い睡眠をとることは、健康を維持するために必要だ。
意外と知られていないが、睡眠は肥満や高血圧、2型糖尿病などと関連している。
睡眠を改善することで、これらの疾患も改善できる可能性が高い。

よく眠れている人は心臓病や脳卒中のリスクが低い

睡眠パターンが健康的な人は、心臓病や脳卒中などの心血管疾患のリスクが低いことが38万人超を対象とした大規模な調査で明らかになった。 たとえ心臓病や脳卒中の遺伝的リスクが高い場合でも、良い睡眠をとっていると、そのリスクを相殺するのに役立つという。 「良い睡眠をとっている人は、心血管疾患のリスクが35%少なく、心臓病と脳卒中のリスクが34%少ないことが分かりました」と、米国のチューレーン大学肥満研究センターのルー キー所長は言う。

38万超の中高年を対象に調査

研究チームは、英国の中高年を対象に、病気の予防や診断、治療の向上を目的に行っている研究プロジェクト「UK Biobank」に参加した、38万5,292人を対象に調査。 睡眠パターンについて、5つの項目(生活リズム、睡眠時間、不眠、いびき、日中の過度の眠気)で評価した。 その結果、睡眠パターンがもっとも健康な人は、もっとも不健康な人に比べ、心臓病や脳卒中などの心血管疾患で35%、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈性心疾患で34%、脳卒中で34%、それぞれリスクが少ないことが分かった。

遺伝的リスクが高くても睡眠改善は効果がある

研究チームは参加者の血液サンプルから、心臓病や脳卒中などの発症に関連する遺伝的変異として知られるSNP(一塩基多型)も調査した。 その結果、遺伝的なリスクが高いものの睡眠パターンが健康な人は、狭心症や心筋梗塞、脳卒中のリスクが抑えられる傾向があることが明らかになった。 「心臓病や脳卒中のリスクを減らすために、生活スタイルを改善し、良い睡眠をとるこが不可欠です」と、キー所長は指摘している。

睡眠を改善すれば肥満や糖尿病も良くなる

肥満や2型糖尿病の原因として、遺伝的な体質や、不健康な食事、運動不足などの生活スタイルが考えられているが、実は睡眠も大きな役割を果たしている。 睡眠については、多くの人が見落としがちだ。しかし、米国立睡眠財団によると、睡眠不足や質の良くない睡眠は、食事や運動の習慣とともに、2型糖尿病の重大な危険因子となる。 睡眠障害を解消すると、空腹時血糖値の低下、基礎インスリン分泌能の増大などの影響があらわれ、糖尿病のリスクが低下するという報告がある。

体内時計が乱れるとホルモンも乱れる

睡眠障害が続くと2型糖尿病のリスクが上昇する主な原因は、睡眠が関わるホルモンの分泌が乱れることだ。 体には1日周期でリズムを刻む”体内時計”が備わっており、日中は体と心が活動状態に、夜間は休息状態に切り替わる。 メラトニンは睡眠を司るホルモンで、概日リズム(サーカディアンリズム)を調節している。睡眠不足やシフトワークなどにより、メラトニンの分泌が乱れると、体内時計が狂いやすくなる。 睡眠不足が続くと、体内時計が乱れやすくなる。体内時計は、血糖を調節するホルモンであるインスリン分泌にも影響し、糖尿病にも関わる。

睡眠はさまざまなホルモン分泌に関わる

また、コルチゾールは、利用できるエネルギーを体内に準備する働きをするホルモンで、「ストレスホルモン」とも呼ばれている。 コルチゾールは昼間に活性化し夜は低下する。睡眠不足が続くと、コルチゾールの分泌が過剰になり、血糖値が上昇しやすくなる。 さらに、睡眠不足になると、食欲を亢進するグレリンの産生が促進され、エネルギー代謝の調節に関わるレプチンの抑制が起こる。 その結果、食欲が増し、満腹感が低下し、とくに炭水化物や糖質の多い食べ物を食べたくなる。 睡眠不足が続くと、疲れを感じやすくなり、運動不足にもなりやすくなる。運動の習慣化は体重と血糖をコントロールするために重要だ。

睡眠不足が慢性化すると危険

米国立睡眠財団は、1晩に7~9時間の睡眠をとることを勧めている。 睡眠不足が数日で済む場合は、翌日に十分に睡眠をとることで、回復することが可能だが、睡眠不足が慢性化しているのは危険な状態だ。 1晩の睡眠時間を4~6時間に制限すると、ノンレム睡眠とよばれる深い眠りが減り、結果としてインスリン感受性が悪くなり、良好な血糖コントロールを維持できなくなるという報告がある。 睡眠不足を解消することで、ストレス反応や内分泌機能の改善を得られ、糖尿病リスクを減らすことができる。

睡眠を改善するための8つのヒント

米国立睡眠財団(National Sleep Foundation)は、睡眠を改善するためのヒントとして、次のことをアドバイスしている。

● 運動をする

運動を習慣化することで心身にもたらされる改善効果は大きい。日中に適度な運動する人は、良く眠れる傾向があることを示した研究が報告されている。

● 睡眠環境を整える

寝室を静かに暗くすることで、睡眠が促させる。温度を適度に調整することや、快適なマットレスや枕を使うことも大切。

● リラックスできる時間を作る

1日の終わりに、歯磨き、温かいシャワー、リラックスできる音楽、読書など、クールダウンのための時間を作る。これにより、メラトニンの分泌が刺激され眠りにつくのを助ける。

● 朝は太陽の光を浴びる

体内時計を調整するために、規則正しい生活習慣が効果的だ。
午前中に起床して太陽の光を浴び、夜は明るい光を避けるようにする。
毎日同じ時刻に就眠・起床して、ベッドにいる時間を必要以上に長引かせないことも大切。

● ベッドにスマホを持ち込まない

寝室は睡眠をとるだけの場所に限定し、仕事に必要な書類や道具、パソコン、スマートフォン、テレビなどを持ち込まない。

● ベッドに心配事を持ち込まない

昼間の心配事が気になり、眠れなくなるという人は多い。眠れない日が続くと、夜になり今度は眠れなかったらどうしようという不安が高まることもある。
昼間の心配事ややるべき事をノートに書き込み、朝になったら対処するようにして、眠るときにはなるべく考えないようにする。

● 眠れないときはベッドを出る

眠れない場合は、無理に眠ろうとせず、ベッドを出て、疲れを感じるまでリラックスして過ごす。

● 改善しなければ医師に相談する

上記のことを行っても、どうしても眠れない場合は、医師に相談する。
眠ると息が詰まってしまい睡眠が浅くなり、夜中に目が覚める、足の異常な感覚で動かしていないといられなくなるといったときにも、医師に相談を。